過酷すぎる学校生活に転校者が続出 18人の生徒たちはなぜ和歌山南陵に残る選択をしたのか (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 甲斐理事長は金策に回り、滞納金を完済。寮の食生活も改善され、老朽化が進む校舎を改修するためにクラウドファンディングを開始している。

 学校再建に向けた大きな焦点になるのは、学校法人として受けている生徒募集停止の措置が解除されるか否か。甲斐理事長に見通しを聞くと、「(措置解除に向けた)書類はひと通り提出しています」という答えとともに、驚愕の事実が明らかになった。

「ここ2年分の学校の決算書がなかったので、会計士とさかのぼって処理しています」

 学校の決算書がない──。そんなことがありえるのか聞くと、甲斐理事長は困惑した表情でこう答えた。

「そうなんです。お金の問題だけでなく、国から指導されてきた書類も手つかずで山積みになっていたんです。生徒募集停止の措置が解除されれば協力してくれるという企業もあるので、なんとか解除に向けて動いている最中です」

 苦境にあえぐ和歌山南陵だったが、そのなかでも大きな希望の光があった。部員わずか6人のバスケ部が今夏に福岡県で開催されるインターハイに出場したのだ。

(つづく)

プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る