河野伸一朗は「投手一本」か「二刀流」か「そんなこともできるの?」と驚きの大器はドラフト候補へ成長中 (2ページ目)
そういえば......と思い返す光景があった。昨夏の甲子園、左打席に入った河野はマウンドでの落ち着いた佇まいとはうって変わって、体を小刻みに揺らして構えに入った。まるで甲子園のバッターボックスが待ちきれないかのようだった。その後、ショート前にゴロを放つと、スピーディーな全力疾走で内野安打を勝ち取っている。
「昔から人よりもバッティングが得意で、ボールを飛ばすことに楽しみを覚えていました。甲子園で打てたのは楽しかったですね。小さい頃から運動が得意で、走ることにも結構自信があるんです」
バッティングについて語る河野は、終始あどけない笑顔を浮かべていた。運動能力の高さを裏づけるように、崎田監督も「体育の授業では『そんなこともできるの?』と驚くことばかりで、バレーボールをさせてもすごいです」と証言する。
【昨夏の大会前に起きた事件】
一方、ピッチングについて語る河野は、表情がキリッと引き締まる。
「自分がやらかしてしまうとチーム全体に迷惑がかかるので。だから常に集中しないといけないし、緊張感や責任感をすごく感じますね」
自分の投球に自信がないわけではないが、チームの勝敗に直結する重責から野手ほどの解放感はないようだ。
昨夏の大会前には、ちょっとした事件があった。練習試合でふがいない投球を続ける河野に、崎田監督から「もっと責任感を持て!」とカミナリが落ちた。それでも「大丈夫です」と返す河野に、崎田監督は「だったら結果を出せ!」と言い放った。
当時の心境を河野はこう振り返る。
「あの時はたしかに練習試合で打たれていたんですけど、なぜか宮崎県内のチームであれば打たれない自信があったんです。監督にそこまで言われたら、夏に結果を残してやろう......と火がついたところはありました」
そして、河野は夏の宮崎大会で5試合42イニングを投げ、チームを初の甲子園出場に導く。崎田監督は「6月頃のウチを知っている人なら、誰も甲子園に行くとは思っていなかったはずですよ」と苦笑する。
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