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甲子園初出場の別海高校を変えた「地獄の紋別合宿」 創部46年目の全道初勝利&目標のベスト4進出を果たした (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki

 影山にはすでにイメージができていた。

「それまでの打席でインコースを攻められていたし、バッティングの感覚も悪くなかったので『外は来ないかな』と狙い球を絞って」

 インコースのストレートをライト前に弾き返す。島影の攻めの姿勢と影山の冷静さがリンクした瞬間だった。直後の9回に1点を勝ち越されたが、勢いは別海にあった。

 その裏、6番の鎌田侑寿紀(ゆずき)が粘りフォアボールで出塁すると、堺から「決めてこい!」と送り出された中道が7球目のストレートを振り抜く。「外野の頭は超えるかなぁ」と目で追っていた打球は、札幌ドームのレフトスタンドまで到達した。「元4番」が決めたサヨナラ弾。創部46年目の別海が、春夏秋を通じて初めて全道大会で勝どきを上げた。

 島影は勝利を噛みしめるように言った。

「全体を通して、リスクを考えて消極的にいくよりは思いきりプレーさせたほうが、チームに勢いが出ると思っていました。全道大会は、それがうまく回りましたよね」

【タイブレークを制し全道ベスト4】

 次の知内戦でも、その積極性が光った。

 ハイライトは1対1で迎えた、延長10回表だ。ノーアウト一、二塁から始まるタイブレークで、先頭の6番の鎌田の送りバントが内野安打となり満塁とチャンスを広げた。

 打席に立つ中道は落ち着いていた。これまで3打数0安打。それまで打ちとられた3打席をイメージしていたというのだ。

「凡打した打席は全部、変化球でやられていて。あの時も『変化球で攻めてくるだろうな』と思ったので、それだけを狙っていました」

 打ったボールが、スライダーだったかカーブだったかは判然としなかったが、縦に曲がるボールに対して素直にバットが出た。打球はレフト線を破り一挙3点。その裏、1点差に詰めよられたが逃げきり4対3で勝利。

 エースの堺も2試合連続完投と夏の地獄の成果をマウンドで示し、それに打線が応える。目標としていた全道ベスト4。島影が監督就任時に掲げていた「5年で初勝利」から遅れること3年。別海は「全道2勝」の快挙を果たすことで、野球部に新たな歴史を刻んだ。

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