甲子園初出場の別海高校を変えた「地獄の紋別合宿」 創部46年目の全道初勝利&目標のベスト4進出を果たした (2ページ目)
「うちはこれまで、『絶対に勝つ』みたいな責任に耐えられるようなチームではなかったんですね。だから、釧根支部で勝ち上がれるだけの能力を持っていたとしても、力みにつながって勝てた試合を落とすという。その壁を乗り越えられたら、『失うものがない』くらいの覚悟で戦えると思っていました」
彼らは耐えた。支部予選では初戦の釧路明輝を6対2で撃破し勢いに乗り、釧路工を6対1、代表決定戦で釧路江南には5対1と快勝したのである。
【元4番のサヨナラ弾で全道初勝利】
4年ぶりの全道大会出場。「ベスト4」を掲げる別海を指揮する島影は、大会で肩の荷が下りたチームにちょっとした仕掛けを施す。
第一の矢が、7番・中道航太郎だ。
支部予選からいまいち調子が上がらなかったとはいえ、1年生から4番に座り続けていた主軸の打順を大胆に下げたのである。
「キャプテンを任されるプレッシャーをまだ感じていましたし、『打順を下げて伸び伸び打たせよう』と思っただけですよ」
その中道は、全道大会を目前に控えバッティングの状態が上がっていることを自覚していた。コーチの小沢永俊の指導により、肩の力を抜いてゆったりとバットを構えるフォームに修正。ボールにインパクトする瞬間、骨盤を逆回転させるようにしてバットを振り切るツイストも身につけることで、スイングのムラが解消され確実性が増していたのだ。
全道大会での苫小牧中央との初戦は、2回に復調した中道のレフトフェンス直撃のツーベースで別海が先制した。そして、島影が仕掛けた第二の矢は1対2で負けていた8回裏。ノーアウト三塁と同点のチャンスで、2番の影山航大を迎えた場面だ。
小技のできる2番バッター。定石どおりならばスクイズのところ、影山は強攻に出た。
「このチームは、落ち込むと立ち直れない傾向があって。影山は小さいですけどバッティングがいいんで、スクイズより打たせたほうが、仮に三振だったとしてもベンチは『次だ!』と前向きになれると思ったんです」
打席に立つ影山自身、監督からスクイズのサインが出るものだと思っていた。それが「打て」と指示されたことで、「自分は信頼されているんだ」と胸が高まった。
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