井端弘和も逸材と認めたドラフト候補 山梨学院大・宮崎一樹の反骨心 中高6年間控えから覚醒 (3ページ目)
久しぶりにレギュラーとして試合に出続けているうちに、自覚も生まれるようになる。2年冬に、翌年からの上位打線への起用を見越してパワーアップに着手。食事とトレーニングにより体重を10キロ増やし、力強い打球を目指した。
さらに須田監督や伊藤彰コーチから、それまでの流し打ち中心の打撃ではなく「引っ張る打撃もしてみよう」と提案を受けて着手すると、3年秋に大きく開花する。
9試合で打率.600、5本塁打、19打点、7盗塁の大暴れ。この活躍が認められ、侍ジャパン大学代表候補に選出。合宿でも持ち味を発揮して代表に選ばれると、7月に行なわれた第44回日米大学野球選手権大会に出場した。
この大会で侍ジャパン大学代表は、アメリカ大学代表を3勝2敗で下し、節目である大会通算20回目の優勝を果たした。
だが帰国便に乗り込む宮崎の表情は、どこか曇っているように見えた。移動や連戦の疲れだけではないだろう。大会を通して打席に立てたのは、捕手を除いて野手では最も少ない2打席のみ。結果は、空振り三振と四球だった。
それから1カ月後、山梨学院大のグラウンドに行くと宮崎の姿があった。
「いやぁ、悔しかったですね。いろんな感情を持ちました」
それは「もっと使ってくれということ?」と問うと、「ハハハ、そうですね」と笑ったあと、「ベンチにいても、出ている選手に負けているとは思わなかったです」と目の色を変えた。つづけて「悔しい思いをした時がスイッチの入る時。成長する時だと思っています」と語った。
反骨心で道を切り拓いてきたのが、宮崎の野球人生だ。足踏みすることなく、もがきながらさらなる高みを目指す。
著者プロフィール
高木 遊 (たかぎ・ゆう)
1988年生まれ、東京都出身。大学卒業後にライター活動を開始し、学童・中学・高校・大学・社会人・女子から世代別の侍ジャパン、侍ジャパントップチームまでプロアマ問わず幅広く野球を中心に取材。書籍『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方〜氷点下20℃の北の最果てから16人がNPBへ〜』(樋越勉著・日本文芸社)『レミたんのポジティブ思考"逃げられない"な"楽しめ"ばいい!』(土井レミイ杏利著・日本文芸社)『野球で人生は変えられる〜明秀日立・金沢成奉監督の指導論(金沢成奉著・日本文芸社)では、編集・構成を担当している。
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