慶應との練習試合で立命館宇治は何を学んだのか 躍進の舞台裏にある 「エンジョイ・ベースボール」と「リーガ・アグレシーバ」 (4ページ目)
【リーガ・アグレシーバ参加の意図】
また、投手陣はラプソードの測定を月1回実施。回転数や回転軸などの項目から自分の特徴を知ったうえで、アシックスと契約するアナライザーからアドバイスを受ける。たとえば、今夏の甲子園で背番号1をつけた2年生投手の十川奨己は身長195センチの長身右腕として注目されるが、まだまだ伸ばすべき点が多いと西田部長は言う。
「十川のストレートはまだ1900回転くらいなので、質を上げるのが課題です。具体的にはフィジカルのトレーニングで、それが必要なのは本人も自覚しています。ラプソードの数値で自分の特徴がわかることで、どういうピッチャーになりたいのかが明確に描け、目標を立てやすくなりました」
育成という意味では、前述の『リーガ・アグレシーバ』も貴重な場になっている。Aチーム(一軍)未満の1年生を底上げするためにプレー機会を設けようと、2021年から参戦。立命館大学に進学して野球を続ける3年生もチームに加わり、木製バットで実戦機会を積む場にしている。
「大学への準備という意味で、木製バットで出させてもらえるのはありがたいですね」
立命館大学で野球を続ける塚本はそう話した。1年生の秋からAチームに入っていたのでリーガの出場経験はないが、3年生が下級生と一緒にプレーする好影響を伝え聞いていたという。
「3年生は、野球でプラスにつながる声をたくさん出していたと聞きました。多く経験している分、この後の試合ではどんな展開が予測されるかとか、どんなプレーをすべきかわかっていると思います。自分も下級生にそういう点を伝えていきたいです」
秋になってもチームに残る3年生がいて、下級生に経験を伝えていく。1年生たちはリーグ戦で多くの実戦機会を持ち、翌年以降の飛躍を目指す。そうしたサイクルを回しながら、立命館宇治は新たな成長につなげようとしている。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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