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慶應との練習試合で立命館宇治は何を学んだのか 躍進の舞台裏にある 「エンジョイ・ベースボール」と「リーガ・アグレシーバ」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 同時に、独自の取り組みとして身を結んだものもある。そのひとつが、スポーツ器具ブランドのアシックスに依頼して年4回実施している測定だ。打撃ではスイングスピード、守備では打球への反応速度、送球のスピードや正確性、走塁では塁間や一塁から三塁までのタイムなどを計測する。この取り組みを中心になって進めた西田部長によると、興味深い事実が発覚した。

「里井監督は俊足、強肩の選手を好んで起用していたところ、測定の結果、レギュラーはそれらの数値が極めて高いとわかりました。つまり、うちのスタイルがあらためて可視化されたということです。測定で各種の数値が出ることにより、『こういったところを伸ばしていこう』とわかってきました」

 立命館宇治では走塁に力を入れ、塚本は「どうしたら足が速くなるか」と考えて朝練のメニューを組んできた。朝練ではもともと体力アップに主眼を置いてきたが、測定の数値も参考に、ダッシュや瞬発力アップのメニューを多く入れるようにした。

 付属校の立命館宇治は"7年計画"で強化できる強みもある。アシックスの測定は立命館大学野球部でも行なわれており、内部進学したOBの数値を参照した。現在は日本新薬に進んだ右腕投手で、立命館大学時代に大学日本代表に選ばれた山上大輔の数値だ。西田部長が続ける。

「山上が大学ジャパンに入った時のインボディの数値を見せてもらいました。それで『こういう方向で目指していこう』と、何となく成長の方向性が見えてきましたね。それがさまざまな計測をするようになったきっかけにもなっています」

 インボディとは、体に含まれる水分やタンパク質、体脂肪などの成分を測定する器具だ。プロ野球の西武でも入団時に測定し、2022年ドラフト5位の近江高・山田陽翔の筋肉量はすでに西武投手陣の平均値に達していたという。つまり、高校時点で"大人の体"を獲得していたわけだ。こうした数値がわかると、起用法や必要なトレーニング量について根拠を持って決めていくことができる。

 高校、大学の"7年計画"で選手の育成を進める立命館宇治では、同様に中期的なアプローチが可能になるわけだ。

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