大阪桐蔭が練習試合を申し込んだ生光学園の最速153キロ右腕・川勝空人 9回3失点の好投も「全然ダメ」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 2回以降もピンチは招くものの、要所を切り抜ける。スコアボードには両チームとも0が並び、川勝は5回までに8個の三振を奪った。

 川勝の投球フォームには四肢がしなるような柔らかさや、リリース時に指先でボールを爪弾くような繊細さがあるわけではない。ゴツゴツとしたたくましい体を目いっぱい使い、パワフルに右腕を振る。コントロールは暴れるが、適度な荒れ球になって打者は的を絞れない。

 6回にタイムリーヒットを浴び、8回にはラマルに二塁打を打たれた直後に2ラン本塁打を被弾。それでも9回を投げきり、大阪桐蔭を3失点に抑えた。試合は0対3で敗れたものの、生光学園の幸島博之監督は「夏の疲れが残っていい状態ではなく、守備にも足を引っ張られるなかで桐蔭相手に3失点なら十分」と川勝を称えた。

【目指す投手像は勝てるピッチャー】

 だが、グラウンド挨拶を終えてベンチ裏に現れた本人は、浮かない顔をしていた。「納得がいかないですか?」と尋ねると、川勝は「はい」とうなずいた。

「全然ダメだったので。初球にストライクが入らないし、2アウトからフォアボールを出してるし......」

 川勝は大阪府出身で、中学時代は藤井寺ボーイズでプレーしている。大阪桐蔭という存在の大きさを誰よりも理解しているのではないか。そう想像して本人に聞いてみたが、川勝は首をひねった。

「いや、別に。そんな興味ないです」

 大阪桐蔭打線の感想は「振りが強いと感じた」。強烈なライト前ヒットを打たれた徳丸については「やっぱりすごい。今まで対戦したなかではいなかった」と語った。人懐っこい笑顔とは裏腹に、「人見知りなんで」と取材には不慣れのようだ。

 川勝に目指す投手像を尋ねると、真っ先に「勝てるピッチャーになりたい」という答えが返ってきた。重ねて「0対1で好投して負けるのと、10対9で打ち込まれて勝つのではどちらがいいですか?」と聞くと、川勝は迷わず「勝ちたい」と答えた。たとえ相手が大阪桐蔭であろうと、川勝にとっては悔しい負けなのは変わりなかった。

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