高校野球は新基準の金属バット導入でバッティングがどう変わるのか 試打した帝京高校の部員は「音に惑わされる感じがします」 (2ページ目)

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

●新基準は「個性が出しにくい」バット?

ーー現行バットは打者有利で投手の負担が大きく、ピッチャー返しによるケガも問題視されてきました。新採用のバットは、低反発による「飛ばないバット」と言われています。

前田 パッと見では大きな変化はないように感じますが、確かに全体的に細く、木の形状に似ていますね。でも私は、これが本来のバットの形だと思う。

 これまでのバットは打球部が太く、そこからグリップに向かってキュッと絞られていたり、グリップは細くてもそこから先がいきなり太くなっているものなど、種類によって少なからず違いがありました。今回の新基準によるバットには、そこまでの違いはないように見えます。

ゼット・石神弘一(以下、石神) かつては最大径が70mmの時もありましたが、そこから67mm、そして今回は64mmになっています。

 この64mmに合わせなければいけないとなると、バットの先や手元を太くしたり、変化のあるものをつくるのは難しいというのが現状です。しかも全体の重量は900g以上で現行と同じなのに、芯の部分をこれまでより1mm厚くするという基準もあります。

 肉厚になったうえ、さらにどこかを太くするなどしたら900gをゆうに超えてしまうので、これを高校生が振るというのは現実的ではありません。

帝京野球部OBで「ゼット」勤務の石神弘一氏(写真右)帝京野球部OBで「ゼット」勤務の石神弘一氏(写真右)この記事に関連する写真を見る前田 「個性が出しにくい」バットと言えるわけだ。

石神 他社情報は不確かですが、どこも今のところ同じような形状にとどまっていると思います。今後の流れを見ながら、時間をかけて改良していくことになりますね。

ーー帝京でも試し打ちしているゼットのバットを例にとると、現時点では打球感の異なる3シリーズと、4種のバランスで構成された計7モデルが展開されています。長さは83cmまたは84cmの2種類ですね。

前田
 3シリーズとも形に大きな違いはなく、見た目ではどれも同じ感じですね。細いので軽そうに思いましたが、持ってみるとこれまで同様、重量感はあります。最大径が細くなっているのに重さは同じ。

 その分、金属が肉厚になっているから反発力が落ち、だから飛びにくくなるというわけですね。ミートポイントも狭まれるので、木のバット同様、ボールをしっかり芯でとらえて打つ必要があると思います。

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