メジャーを目指す和製イム・チャンヨン 名城大・松本凌人は無念の代表落選も前を向く (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

【悲願の代表入りは叶わず】

 合宿の紅白戦では、シンカーで空振りを奪うシーンもあった。得意のスライダー、カットボールも健在で、投球の幅が広がった感がある。

「成績不振によって、スカウト陣の評価が落ちるか不安だったのでは?」

 そう尋ねると、松本は笑って首を横に振った。

「ずっと前を向いてやっていきたいんです。ドラフトは秋なので、ここは落ち込むところではないと思っていました。中部大に負けた時は落ちかけましたけど、チームメイトから『おまえで負けたら仕方ない』と声をかけられて助けられました。まだまだ力は足りないですけど、目指すところは変わらずやっていきたいです」

 シンカーを習得するためストレートを犠牲にした時期もあったが、今はストレートとシンカーの両方を手に入れた。一歩下がって、二歩進んだ感がある。

 だが、それでも松本に吉報は届かなかった。19日に発表された大学日本代表のリストに、松本の名前はなかった。同僚の最速154キロ右腕・岩井俊介は代表入りしており、松本にとっては無念の結果となってしまった。

 それでも、松本が下を向くことはないだろう。合宿での取材時に「いい知らせが届くことを祈っています」と伝えると、松本は力強くこう語っていた。

「野球をやっている以上は日本を背負って戦いたいです。なんとか選ばれたいですけど、もし落選したとしても自分が落ち込むことはないです。上にいくためのボール(シンカー)も覚えられたし、もっとレベルアップしていきます」

 大きな野望を胸に、速球派サイドハンドはこれからも打者の闘争心を刈り取るような鋭いボールを投げ続けるはずだ。

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