名将・馬淵史郎監督も絶賛の「二刀流」山形中央・武田陸玖 最後の夏へ、投手として見せたいボールと打者としての課題は? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

【大阪桐蔭・前田の投球を見て「ガチで速い」】

 U18候補合宿で、印象的なシーンがあった。合宿2日目に午前と午後に分かれて7イニング制の紅白戦が行なわれた。午後の先発投手を務めたのが、前田悠伍(大阪桐蔭)と東松快征(享栄)。いずれも今年の高校球界を代表する左腕である。

 前田と東松は午後の登板に備え、早めに昼食を済ませてキャッチボールを始めた。その様子を代表候補選手たちは一列に並んで、弁当を食べながら見守っていた。そのなかには武田もいた。

 武田の目に、両雄のキャッチボールはどう見えていたのか。

「ふたりとも『ボールが強い』と感じました。最後まで球の力が抜けないというか、威力が落ちないなと」

 武田はそう振り返る。前田のボールはゴムのように弾力を帯びた球筋なのに対して、東松は鉄球を投げつけるような硬質の剛球。武田はどちらかと言えば、前田寄りの球質だろう。

 紅白戦での前田の投球は圧巻だった。ライトを守っていた武田は、守備を終えてベンチに帰ると「ガチで速い......」と驚きを隠せないようだった。

 とはいえ、武田にU18候補合宿の話題を振っても、特別にいい反応が返ってくるわけではない。「他人は他人、自分は自分というタイプですか?」と尋ねると、武田ははにかみながら「はい」と答えた。

 今春の山形大会は、チームは準々決勝で羽黒に3対8で敗れた。武田は「いつでもいけるように準備していた」と言うものの、奈良崎匡伸監督の「バッティングもピッチングも感覚がよくなかった」という判断で出場は見送られた。

 バックネット裏で視察したスカウト陣からは「足取りが少しぎこちない」とコンディション面を不安視するコメントも聞かれたが、これから夏にかけて武田に熱視線が注がれるのは間違いないだろう。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る