驚異の8試合20盗塁で首位打者も獲得...白鴎大・福島圭音は快足を武器に「全国での勝利」と「プロ」を目指す (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 だが、直後の6回裏。今度は福島が守備で見せ場をつくる。二死から上武大の左打者・河崎竣(4年)が放った打球は、左中間後方への大飛球になった。長打性の打球を追って、福島が背走する。「最初からフェンスまでの距離を計っていた」という福島は、フェンス手前でグラブを伸ばしながらジャンプ。フェンスに激突しながら、打球をキャッチする大ファインプレーをやってのけた。

 白鴎大は松永大輝(2年)、山田怜卓(4年)のリレーで上武大の怒涛の反撃をしのぎ、0点に抑える。9回裏の無死一、二塁のピンチも無失点に切り抜けた瞬間、白鴎大の選手たちはマウンドに集まり喜びを爆発させた。

【打率5割で首位打者も獲得】

 福島は人目もはばからず、顔をしわくちゃにして号泣した。表彰式や藤田慎二監督の胴上げを終えると、福島は笑顔で取材に応じてくれた。

「あんまり覚えてないんです。自分たちの代で優勝できたので、こんなにうれしいことはないです。今まで何回も上武が優勝しているところを見てきて、悔しい思いをしてきましたから。伊勢崎から小山に帰る時、いつも仲間たちに申し訳ないと思っていました」

 進藤に盗塁を刺されたシーンについて尋ねると、福島はこちらを真っすぐに見つめてこう答えた。

「秋にリベンジできるのはうれしいです。チームは勝てましたけど、進藤には負けたんで。次は決めますよ」

 その言葉にショックは感じられなかった。それ以上に、チームが勝てた喜びが勝っているようだった。

 シーズン20盗塁という大記録について尋ねると、福島はこう答えた。

「プロへのアピールとか、新記録を目指してきたというよりは、チームを必死で勝たせようとしていたら、記録がついてきたという感じです。監督からも『思いきっていってくれ』と言われていました。タイトルを獲っても、チームが勝たなければ意味がないですから」

 点差が離れた場面での盗塁もあったことを聞くと、福島は「1点でも多くとりたかったので」と意図を説明した。

「点差があるからといって気の抜いたプレーをするのは相手に失礼だし、常に0対0のつもりで『絶対に抜かないぞ』と思いながらプレーしていました」

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