驚異の8試合20盗塁で首位打者も獲得...白鴎大・福島圭音は快足を武器に「全国での勝利」と「プロ」を目指す (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 この直接対決の時点で、上武大も白鴎大も8戦全勝で並んでいた。勝ったほうがリーグ優勝を決め、6月からの大学選手権に出場できる。バックネット裏には複数球団のスカウトの姿もあった。

【大一番でまさかの一発】

 そんな大一番で、福島は意外な形で輝きを放つ。1回表の第1打席でライトスタンドに飛び込むホームランを打ったのだ。

 先頭打者の杉谷慧(3年)が上武大の先発左腕・井出海翔(2年)の巧みな牽制球に誘い出され、上昇機運がしぼみかけた矢先での一弾。右投左打のアベレージヒッタータイプの福島にとって、これが今季リーグ戦初本塁打だった。

「なんなんすかね、神様が打たせてくれたようなもんですよね。得意なコースに得意な球(スライダー)がきて、いい形でしっかり打てました」

 流れをつかんだ白鴎大は、序盤から優位に試合を進めていく。4回表には1点を追加し、2対0とリードを広げた。

 進藤対福島の対決が実現したのは、5回表だった。二死無走者から福島が巧みなバットコントロールでレフト前に運び、出塁する。二死一塁、おあつらえ向きの盗塁シチュエーションである。

 マウンド上の井出は明らかに福島を警戒し、一度、二度と牽制を繰り返す。視線を変え、リズムを変えて一塁に投げる井出の牽制は、帰塁するだけで困難に見えた。1球目はスタートを切れず、福島は一塁にとどまっている。

 それでも2球目、福島は果敢にスタートを切る。井出が投じたストレートが右打者の外角高めに浮き、結果的にウエストしたような形になった。進藤が力感なく、機敏に二塁送球すると、正確なコントロールで二塁ベースの真上に伸びていく。タッチアウト。福島の快足をもってしても、徹底マークから逃れることはできなかった。

 一塁側の上武大の応援席からは、メンバー外部員の大歓声が響いた。大黒柱が実力を発揮し、いよいよ常勝軍団が反撃を開始する。そんな気配が漂った。

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