真鍋慧は木製バットでも快打連発 U18日本代表強化合宿で見せた圧倒的パフォーマンスにスカウトは何を思う? (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 一方の堀は紅白戦で5打数2安打と実戦での強さをアピール。さらに数字に表れにくい部分での魅力も見せた。堀とバッテリーを組んだ東松(享栄)はこう証言する。

「垂れたボールでも堀がうまく捕ってくれるので、全部がいい球に見えました。おかげで気持ちよく投げられました」

【野手は個性よりもバランス型】

 全体的に走攻守のバランスがとれた選手が多く選出されており、飛び抜けた個性をアピールできた野手は少なかった。

 それでも、打撃練習から雄大なフォロースルーで打球を運ぶ中澤恒貴(八戸学院光星)。紅白戦で4安打を放ち馬淵史郎監督(明徳義塾)もバットコントロールを評価した高橋海翔(山梨学院)。コースにさからわず広角にヒットゾーンへと運べる高中一樹(聖光学院)。走攻守にスピードと強さを感じさせた知花慎之助(沖縄尚学)。キレ味抜群の投球だけでなく、天才的な対応力でも輝きを放った武田陸玖(山形中央)といった野手が躍動した。

 また、「山陰の浅野翔吾」の異名を持つ高野颯太(三刀屋)は左有鉤骨骨折から復帰途上のため、守備のみの参加になったのは残念だった。

「合宿のスピード感についていくので精いっぱいでした。前田くん(悠伍/大阪桐蔭)はほかの選手と違うオーラがあります」

 こんな初々しい感想を口にする選手が有名選手から刺激を受け、進化していく。これも合宿の大きな意義だろう。4年前は駿河総合から紅林弘太郎(現・オリックス)が合宿に参加し、同年秋のドラフト会議で2位指名を受けた例もある。

 高野は身長176センチ、体重90キロの厚みのある肉体で、とくに「もとから太い」と語る太もも周りの発達ぶりには目を見張った。本人によると、左有鉤骨の故障もあと1カ月程度で治る見込みだという。

 代表合宿中、馬淵監督は野手陣に関してこんな課題を口にしている。

「紅白戦でみんな打っていたのは、変化球の抜け球とかで、本当の速いボールは打てていません。夏までに木のバットに慣れてもらえたらいいですね」

 今回招集されなかった選手にも、チャンスは十分にある。木製バットを使いこなし、夏に日の丸を背負う強打者の出現を楽しみに待ちたい。

投手編はこちら>>

『離島熱球スタジアム』 鹿児島県立大島高校の奇跡

 【タイトル】『離島熱球スタジアム』 鹿児島県立大島高校の奇跡
【著者名】菊地高弘
【発売日】2023年3月3日
【本体定価】1760円(税込)

購入はこちらから>>

プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る