大阪桐蔭・西谷浩一監督「トップにいる感覚は1%もない」 選手には「春で終わるつもりでやろう」の真意
「簡単ではないですが、それだけ大きな記録へ挑戦できることを喜びに変えて頑張りたいと思います」
3月8日に行なわれた関西学院との練習試合。1試合目と2試合目の間に大阪桐蔭・西谷浩一監督が報道陣の取材に応じる場が設けられた。時に冗談を交えながら、史上初となる2度目のセンバツ連覇について問われた時に口にしたのが冒頭の言葉だ。
今チームは、昨年秋の大阪大会、近畿大会、神宮大会を制し、下馬評では優勝候補の筆頭に挙げられている。ただ、西谷監督にその想いは微塵もない。
エース、主将とまさにチームの大黒柱である大阪桐蔭の前田悠伍この記事に関連する写真を見る
【現チームの評価は?】
「いつもと同じで、不安ばかりです。藤浪(晋太郎/現・アスレチックス)の時でも、根尾(昂/現・中日)の時でも、自信を持って大会に入ったことなんか一回もありません。それにチームは毎年変わっているので、秋に勝つことができましたけど、このチームがトップにいるという感覚は1%もないです」
戦力的に昨年秋までは、投げるだけでなく、キャプテンも任されたように、完全に前田悠伍のチーム。言い換えれば、野手陣にチームを引っ張る存在の選手が不在だった。
春夏連覇を果たした2012年は、藤浪の調子が悪くても澤田圭佑(現・ロッテ)がおり、野手陣にも腹の座った個性派が揃っていた。同じく春夏連覇の2018年の代は、根尾、藤原恭大(現・ロッテ)を筆頭にタレント集団と言われ、能力はもちろん、意識の高い選手が集まっていた。
また昨年春を制したチームは、松尾汐恩(現・DeNA)以外の選手は経験が少なかったが、そこへ下級生の前田が加わった。
対して現チームは、エースで主将の前田がもし転んだ時にどうなるか。ほかの投手陣が踏ん張り、野手陣がカバーして試合をとれるのか。このあたりが不透明で、勝ち上がりを考えた時に最大のポイントになる。
一方で、前田の孤軍奮闘で勝ちきる可能性も十分に想像できる。昨年秋、前田は大阪大会決勝で右脇腹に違和感を覚え、それ以降は騙し騙しのピッチングが続いた。前田曰く「50%もないくらい」の状態でも、近畿大会、神宮大会を投げきった。
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著者プロフィール
谷上史朗 (たにがみ・しろう)
1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。