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大阪桐蔭・西谷浩一監督「トップにいる感覚は1%もない」 選手には「春で終わるつもりでやろう」の真意 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そつのない答えが続いた最後、素の顔になった西谷監督がニヤッとしてこう言った。

「ほんとは静かに目立たずにやりたいんです。スタートからバサロで潜って、最後にパッと浮かび上がってゴール。『えっ、アイツどこにおったんや!』みたいな感じで勝つのが理想。だから、マスコミの人にも静かにしておいてほしいんです(笑)」

 ソウル五輪(1988年)の背泳ぎの金メダル、鈴木大地氏のバサロ泳法を例えに、じつに楽しそうに語った。35年前の話で、バサロ泳法を知る人も今では少なくなっているだろう。

「(部長の)有友(茂史)先生からもそう言われました。バサロも通じませんか......(笑)。僕らももう歳ですねぇ。じゃあプロレスのバトルロイヤルで、戦いが始まってからずっとリングの端にいて、最後だけパッと出てきて、上に被さってワン、ツー、スリー。『おまえどこにおったんや!』。これどうですか(笑)」

 昭和プロレスの光景が浮かぶバトルロイヤル。これもピンとくる人がどれほどいるのかわからない。いずれにしても西谷監督の願いは叶うことなく、大きな注目を集めるなか、大会3日目の第3試合に初戦を迎える。

 相手は敦賀気比(福井)。常に日本一を目標に掲げ、鍛え込んでいるチームのひとつだ。センバツの舞台で大阪桐蔭に勝利した実績もある。

 大阪桐蔭は過去の甲子園で15敗を喫しているが、明らかなワンサイドでの敗戦は2006年夏の早稲田実業戦(2対11)と、2015年春の敦賀気比戦(0対11)のみ。

 それだけに初戦が、まず大きなヤマとなる。仮にそこから勝ち上がったとすれば、準々決勝で昨年夏の王者、仙台育英との対戦も見えてくるが、はたして予想どおりにいく大会となるのか、それとも波乱の大会となるのか。

「いろいろな記録とか勝利数とか言ってもらえますが、ただ勝ちたい、ただ優勝したいだけなんです。しっかり準備をして、なんとか最後に生き残っていたいです」

 今年も頂点だけを見据え、大阪桐蔭は戦いの舞台に立つ。

著者プロフィール

  • 谷上史朗

    谷上史朗 (たにがみ・しろう)

    1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。

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