浅野翔吾への期待が確信に変わった瞬間。「この子はスター性がある」、巨人スカウトが明かすドラフト1位指名の裏側 (2ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • photo by Terashita Tomonori

大勢と共通した浅野のメンタルの強さ

「当初からバッティングはいいと思っていましたが、スイング時の後ろ腕の使い方は木のバットで打てるスイング。普通の高校生ではないですね。巨人の歴代打者で例えるならば、村田修一さんのようなイメージです」

昨年の大勢に続き2年連続でドラフト1位指名選手を担当した巨人の岸敬祐スカウト昨年の大勢に続き2年連続でドラフト1位指名選手を担当した巨人の岸敬祐スカウトこの記事に関連する写真を見る 岸スカウトは、打撃面における浅野の魅力を明快に説明した。こうして12球団のスカウトが熱視線を送るなかで迎えた浅野の3年春、岸スカウトがもうひとつ大事にしているという判断材料を落とし込む機会が図らずもやってきた。

 春の香川大会では準決勝を前に負傷し、決勝戦も欠場。続く四国大会では復帰はしたものの本調子とはほど遠い出来で、「厳しいね」と複数の球団スカウトも顔をしかめていた。

 しかし、岸スカウトは「大勢とかぶっていました」と当時の状況を言う。

「逆境を乗り越えるメンタルの強さはプロの世界でやっていくための重要なポイント。そして、大勢も実は昨年春に右肘を疲労骨折したあと、秋までにネガティブな評価をプラスに変えたんです。だから、浅野くんも大勢と似たタイミングでケガをしたので、どう乗り越えていくかを見るようにしました」

 そして浅野は大勢と同じく、ケガからの見事なリバウンドメンタリティで岸スカウトの"宿題"をクリアしていった。浅野は欠場中に「客観的にチームを見ることができた」と感じたという。主将として、「和を大事にする。自分の結果よりチームが勝てばいい」というリーダーシップを随所に発揮した。そして、そのチーム愛は自らのプレーに余裕と引き出しも与えた。

「それまでは自分中心な部分があったけれど、周りを見られるようになったし、下級生よりも声が出るようになった。変わるきっかけは誰にも絶対にあるんですが、浅野くんは周りを見られるようになったところで一皮、二皮むけましたね」(岸スカウト)

 夏の活躍はご存じのとおりだろう。香川大会3本塁打、甲子園3本塁打と圧倒的な成績で高松商を52年ぶり夏の甲子園8強に導いた。その後、侍ジャパンU-18代表としてWBSC U-18W杯の地であるアメリカ・フロリダへ。そこには岸スカウトの姿もあったーー。

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