「まぐれではないと証明できた」京大野球部が史上最多タイのリーグ戦5勝、ベストナイン3人 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 1回表にいきなり3点を奪われ、主導権を握られてしまう。しかし、三原はスパッと愛澤をあきらめ、徳田、牧野へとリレーをつないでいく。

 4年生左腕の牧野は、前年から三原が「使ってください」と近田に訴え続けた存在だった。牧野はストレートを投げているつもりでも、自然と打者の手元で小さく動くクセ球だった。ラプソードから牧野の投球を分析した三原は、「コントロールさえまとまってくれば戦力になれる」と確信があったのだ。

 だが、牧野は期待を裏切り続けた。試合になるとコントロールを乱し、失点を重ねる牧野に野手陣は冷ややかだった。なかには「なんで牧野を使うんですか?」と当時助監督の近田に詰め寄る選手さえいた。

 そんな牧野は自身のクセ球を扱えるようになり、大きく進化した。牧野はこの春のリーグで8試合15回2/3に登板して2勝を挙げ、防御率はなんと0.00だった。

 4年生右腕の徳田も伸びのあるストレートを持ちながら、右ヒジの故障もあり伸び悩んでいた。打者の手元で沈むツーシームの使い方を三原と試行錯誤して体得。牧野と徳田が戦力に加わったことで、京大投手陣は厚みを増していた。

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ベストナインに3人が選出

 また、近畿大打線に打ち込まれた愛澤にしても、2回以降は本職のマスクを被って好リードに転じた。「強振してこないならインコースをどんどん突いてやろう」と攻め、近畿大打線を手玉に取った。

 すると、6回裏にチャンスが訪れる。主砲・山縣薫(天王寺)の適時打などで1点差に迫り、なおも満塁の場面で代打に梶川恭隆(旭丘)が告げられた。梶川は監督の近田が「こちらが言わなくても、大事な場面で準備してくれている」と全幅の信頼を置く切り札だ。この場面で梶川は逆転満塁本塁打の大仕事をやってのける。

 逆転した京大は8、9回をエースの水江がしのいで7対3で勝利。強敵相手の逆転勝ちで3連勝を飾った。

 だが、結果的に京大の快進撃はここまでだった。続く関西学院大戦では3対5、1対4の連敗で勝ち点を落とし、近畿大との第3戦は1対10で大敗。

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