「まぐれではないと証明できた」京大野球部が史上最多タイのリーグ戦5勝、ベストナイン3人 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 水江の「日々生」という名前には、「毎日を大切に生きなさい」との両親の願いがこもっているという。身長172センチと体格的に恵まれているわけではなく、最速140キロと目を見張るボールがあるわけでもない。それでも水江が戦える理由を監督の近田はこう分析する。

「水江は持っているものをちゃんと扱いきれています。自分の球速、球種の性質を理解して、再現できる。今までの京大生では珍しい投手です」

 近田自身、投手として最高峰の舞台で勝負した選手だった。報徳学園では甲子園のスターとして活躍し、2008年ドラフト3位指名を受けてソフトバンクへ。プロの世界では一軍出場なしに終わったものの、その後は社会人野球・JR西日本でプレー。現役引退後はJR西日本の社員として、車掌業務などをこなしている。

 JRの上役に京大野球部関係者がいたことからボランティアで指導を始め、現在は出向という形で京大監督を務めている。まだ32歳と若い指揮官だが、主将の出口諒(栄光学園)は「基本的に選手に任せていただいていますが、誰よりも本気で優勝するために考えている人」と絶対の信頼を口にする。

 中3日空いた立命館大との第3戦でも再び水江が先発。5回1失点と試合をつくり、その後は戦線復帰した徳田、愛澤、牧野のリレーで1失点に留めサヨナラ勝ちを呼び込んでいる。開幕節の関西大に続き2つ目の勝ち点獲得になった。

クセ球を自在に操り進化

 それから中7日空けた5月18日、京大は近畿大との再戦を迎える。直後に関西学院大との初戦が控えていたこともあり、投手起用を任される三原大知(灘)と監督の近田の間で「水江は同点かリードした場面で1〜2イニング程度しか使わない」と決めていた。先発はアンダースローの愛澤である。

 だが、近畿大は初回から猛烈な勢いで愛澤に襲いかかる。愛澤は近畿大打線の恐ろしさを肌で感じたという。

「これまで振ってくる相手には相性がよかったんですけど、近大は徹底してコンパクトなスイングでセンター返しをしてきました。投げづらくて、これは厳しいなと」

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