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大阪桐蔭が誇る「強打のメカニズム」。4試合51得点、11本塁打とセンバツ圧勝の理由 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 なかでも、プロ注目の3番・松尾汐恩と4番・海老根優大の、ふたりの右打者がとくに苦しんだ。

 タイミングをとりながら、左肩が中に入りすぎてしまう傾向のある松尾は、外のチェンジアップを意識させられながら、懐を突くクロスファイアーに差し込まれる場面が目立った。

 初めての甲子園にテンションMAXの海老根は、インコースのストレートに対し強くスイングしようとしすぎるため体の開きが早くなり、強引な空振りや思わぬ方向へのファウルを重ねた。

 冨田は走者を背負ったセットポジションからでも、常時130キロ台後半をキープして、ベース付近でも威力が落ちない「生きたストレート」を投げていた。ヒットこそ二塁打5本を含む8安打を許したが、要所で冨田のうまさが光り、大阪桐蔭は3得点にとどまった。

 それから中3日空いて迎えた準々決勝の市和歌山戦。松尾、海老根のふたりの右打者が打ち方を変えてきて驚いた。

 松尾は左肩を入れすぎず、構えた姿勢をキープしながら踏み込み、海老根もフルスイング一辺倒から丁寧にタイミングをとっていた。強く振ることに一生懸命になっていたのが、「振り出し以前」を大切にするようになり、過剰な力みがずいぶんと緩和されていた。

 おそらく、このふたりに限らず、初戦で冨田に厳しい投球をされ、窮屈なスイングしかさせてもらえなかったことが、逆によかったのだろう。「このままじゃダメだ」と、早々にバッティングを見直し、それ以降の打棒爆発につながったのではないか。

スイングするまでの意識

 大阪桐蔭のバッティングを見ていて、もう何年も前から感じていたことがある。それは「スイングをスタートするまで」にとても気を遣っていることだ。

 多くの高校生はいかに強く、速く振るか......その点ばかりに意識がいきがちだが、大阪桐蔭のバッターは、ボールを見やすい姿勢で構えて、上手にタイミングをとって、投手寄りの肩が開かないように意識づけている。そうすれば、バットは自然といい軌道となり、強く振れるという「理屈」を心得て、打席に入っているように見える。

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