大阪桐蔭が誇る「強打のメカニズム」。4試合51得点、11本塁打とセンバツ圧勝の理由 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 タイミングさえ合わせることができれば、渾身のスイングとなる。「とらえた!」の意識が自然の出力となって、力みすぎることなくバットが振り抜かれるからヘッドが走り、痛烈な打球が生まれる。それが大阪桐蔭打線のバッティングのメカニズムではないか。

 毎年のようにすばらしい打者を並べてくる大阪桐蔭打線だが、体格的に180センチ超えの大型が何人も揃っているわけではない。今回のセンバツでも、投手以外のレギュラー野手の平均身長と体重を計算すると、176センチ、78キロ。決して突出しているわけではなく、むしろ今の高校野球なら平均的なサイズだろう。それぞれの体格に合わせたスイング軌道から、ボールに強烈なバックスピンをかけるバッティングスタイルで、上位から下位までまんべんなく長打を打ちまくった。

 市和歌山の米田天翼や近江の山田陽翔といった大会屈指の好投手をいとも簡単に打ち崩したバッティングには目をむいたが、打った選手たちの表情を見ていると、「いつもどおりに打っただけ」というフラット感が見てとれた。

 その身の丈に合った、いつもどおりのバッティングのレベルが、じつはとんでもなく高い。それが大阪桐蔭の打撃なのだ。

全国クラスの投手陣

 圧倒的な強打で相手チームをなぎ倒してきた大阪桐蔭だが、一方でマウンドに上がった投手たちの能力の高さにも驚かされた。

 4試合中3試合に登板し、そのうち2試合が先発だった川原嗣貴は超大型(189センチ)の剛球投手のイメージだが、実際はカットボールで動かし、カーブ、フォークでボールを落としながら、要所で140キロ前後のストレートを速く見せて、淡々とアウトを重ねていく安定感抜群のピッチング。

 リリーフでマウンドに上がった別所孝亮は、角度ある140キロ超のボールで相手打者を圧倒。そして背番号11ながらエース格として君臨する2年生左腕の前田悠伍。先発でもリリーフでもまったく隙のない快投は、まさに難攻不落。前田は来年のドラフト候補だが、今年指名でも間違いなく1位で消えるはずだ。

 聞くところによると、今回ベンチ入りできなかった投手も、中学時代はそれぞれ将来を嘱望された逸材ばかりだそうだ。

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