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スカウト注目の日大藤沢・柳澤大空は新井貴浩を彷彿する強打者。「技術は三流、体は超一流」から大成なるか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 それでも、「バッティングでチームに貢献できなかったので、なんとかカバーしたかった」とライト前方のライナーをダイビングキャッチ。守備面で存在感を見せた。試合は10対0の6回コールドで、日大藤沢が完勝した。

 バックネット裏には複数人体制で柳澤をチェックするNPBスカウトの姿もあった。今のプロ球界は右の強打者の需要が高いだけに、柳澤の注目度は否応なく高くなる。

 だが、柳澤はこれまで華やかなスポットライトとは無縁の選手だった。牧原巧汰(現・ソフトバンク)というプロ注目捕手を擁した昨年のチームでは、「7番・ファースト」で出たり、出なかったり。「今年に入って急激によくなってきた」と山本監督が言うように、最近になってようやく注目されるようになった。

 高校通算19本塁打という数字も、コロナ禍で実戦機会が限られた事情を加味しても多くはない。現時点では、柳澤よりも技術的に優れた高校球児は他にもいるだろう。

 それでも柳澤に大きな可能性を感じる理由は、ハードな練習に耐えられるだけのタフな肉体の持ち主だからだ。

 山本監督は言う。

「体の強さ、練習に取り組む姿勢は最高です。ケガに強く、痛みに強い。たくさん練習できるのは、彼の一番の強みです」

 これまでの故障歴を聞くと、柳澤は昨冬に肋骨を疲労骨折した件を挙げた。原因はバットの振りすぎによるもので、早期に完治させた後は再び猛練習に励んでいる。

 広島の大ベテランスカウトの苑田聡彦スカウト統括部長が、かつてこんなことを言っていた。

「高校時点での実力で通用すると思ったのは、清原和博のバッティングと立浪和義の守備くらい。あとはプロに入って、いかにうまくなれるかですよ」

 広島でいえば、プロ入り時に「技術は三流、体は超一流」と評され、尋常ではない努力で主砲まで登りつめた新井貴浩の例もある。強靭な肉体、しかも高い身体能力を秘める柳澤なら、これから信じられないような進化を見せる可能性は十分にある。

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