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横浜高時代と変わらぬ福永奨の姿勢。プロ入りへ「人間力」をアピール

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 どんな部分をプロに売り込みたいか──。その質問への答えがふるっていた。

「福永奨という人間をアピールできたらいいなと思います」

 持ち前の強肩でも正確なキャッチングでも投手陣から信頼の厚いリードでもなく、見違えるように向上した強打でもない。國學院大のドラフト候補・福永奨のアピールポイントは自身の存在そのものだ。

主将としてチームを牽引する國學院大・福永奨主将としてチームを牽引する國學院大・福永奨

 この言葉を聞いて、4年前に福永をインタビューした時の様子を思い出していた。名門・横浜高で正捕手を務めていた福永は、こう語っていた。

「今まで生きてきたなかで今が一番楽しい。野球をはじめた頃よりも、今のほうが好きだと思います」

 野球に限らず、どんなスポーツでもレベルが上がれば上がるほど「楽しい」という感情から遠ざかっていくものだ。厳しい現実に打ちのめされ、嫉妬に狂い、疲弊していく選手を何人も見てきた。そんななか、酸いも甘いも噛み分けたうえで「楽しい」と語れる福永に、野球人としての強さを見たような気がした。

 とはいえ、現時点での福永はドラフト指名を約束された立場ではない。大学3年時に正捕手の座をつかんだものの、昨秋のリーグ戦で残した成績は.160の低打率に、10試合で16個の許盗塁。ドラフト候補と呼ぶには寂しい数字だった。

 1を聞けば10の言葉が返ってくる頭の回転の速さと、中学、高校、大学と強豪で主将を務めてきたリーダーシップ。ひとりの社会人として企業側から引く手あまたの人材のはずだ。それでも、福永は希望進路を「プロ一本」と退路を断っている。

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