大阪桐蔭、チーム崩壊の危機。ナインの鼻をへし折ったセンバツの敗戦 (5ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Nikkan sports

 そんなチームが目覚めるきっかけとなったのは、勝利ではなく敗戦だった。

 夏の大阪大会直前に組まれた東邦高校(愛知)への遠征でのことだ。センバツにも出場した強豪との2連戦で、大阪桐蔭は和田、背尾伊洋の二枚看板を先発させるも、2試合とも圧倒された。試合を観戦していた父兄や高校野球ファンからヤジが飛ぶ。

「おまえら、そんなんで甲子園に行けるとでも思ってんのか!」

 選手たちも「やかましいわ、コラっ!」とやり返したが、それほどチーム状態はどん底だった。ただ、この敗戦でチームが変わったことは事実だった。玉山が言う。

「1勝1敗だったらあかんかったしれない。連敗したからよかったんです。いよいよ『これはやばいぞ』となって、初心に戻れたというかね。『一戦必勝で戦っていこう』って」

 東邦への遠征からまもなくして行なわれたミーティング。選手たちはようやく覚悟を決めた。

「負けるんやったら1回戦で負けよう。そのほうが夏休み長いし。勝つんやったら優勝しよう。甲子園に行こう!」

 言うなれば開き直りだった。そして迎えた大阪大会、またしても予期せぬ事態が待ち構えていた。

つづく

(文中敬称略)

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