大谷翔平効果は大学にも。二刀流の日体大エース、ドラフトでの評価は?

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

「3番、ピッチャー、矢澤くん」

 試合前に先発メンバーを告げるアナウンスを聞いて、吹き出してしまった。高校野球ではない。大学野球の、しかもDH制を採用しているリーグ戦なのだ。

 MLBではエンゼルスの大谷翔平が4月4日のホワイトソックス戦に「2番・投手」として先発出場。投げては最速162キロ、打っては特大2号ホームランと全米を揺るがせたのは記憶に新しい。

 そして今、日本の大学野球で新たな二刀流が芽吹いている。

4月10日の首都大学リーグ開幕戦で「3番・投手」として出場した日体大の矢澤宏太4月10日の首都大学リーグ開幕戦で「3番・投手」として出場した日体大の矢澤宏太 日本体育大の矢澤宏太(3年/藤嶺藤沢)は、大学1年時から投打とも高い潜在能力を見せつけてきた。身長173センチ、体重72キロと大きくはない体に、無限の可能性が詰まっている。

 これまでは外野手として出場するか、投手として先発する際は打席に入らない形式を取っていた。先発時に投手と打者を両立するのは、4月10日の首都大学野球リーグ開幕戦・東海大戦が初めてだった。

「保険をかけるつもりならやらないほうがいいと思いますが、ピッチャーでも野手でも勝負しているつもりです」

 いつもそう語る矢澤にとって、この日が本格的な二刀流のスタートになった。

 打者としては第1打席、東海大先発・斎藤礼二(3年)の投じた初球の144キロストレートをバットの芯でとらえるセンターフライ。矢澤は「1球目から仕掛けて、とらえる準備は常にしています」と語る。

 この日は4打席すべて外野フライに終わったものの、長打と紙一重のいい当たりばかり。体の反応の速さ、インパクトの爆発力、芯で正確にとらえる技術を感じさせる内容だった。

 矢澤は「4打席凡退でも内容はよかったですし、冬にやってきたことは出ていました」と振り返る。

 昨秋は打率.368と高打率を残したものの、ホームランはなかった。この冬は打球の角度を上げるために取り組んできた。今春の矢澤は全身を振り絞るような豪快なスイングが目を引き、吉田正尚(オリックス)を彷彿とさせた。

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