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「こんな選手いたのか!」。
高校生トライアウトで見つけた掘り出しもの (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 しかし、それから寺本は悔しさをバネに急成長を見せたという。

「1学年上には天井(一輝/亜細亜大)といういい見本もいて、『振り回すだけじゃダメだ』とわかったのでしょう。意識の高い選手なので、コロナ禍の自粛期間でもよく練習して、かえってうまくなりましたよ。ボールをとらえる力が上がりました」

 50メートル走6秒1の俊足もあり、荒谷監督は「足りないのは身長だけ」と語る。たしかに身長169センチ、体重77キロのサイズはプロの外野手としては小さい。同校へ好左腕の高井駿丞(しゅんすけ)の視察に訪れたスカウトは寺本にも一定の評価をするものの、みな低身長を気にする様子だったという。

 それでも、木製バットを全身で振りこなし、ガツガツと貪欲にアピールする姿は胸を打たれた。「こんな選手にこそ、プロ野球選手になってもらいたい」と思わせるだけの魅力があった。そんな印象を荒谷監督に伝えると、しみじみとこんな反応が返ってきた。

「そう言っていただけると、指導者としてうれしいですね。あまり本人に褒めることはないんですけど、広商の野球を体現してくれていると思いますから。寺本は『うまい選手』というより、『強い選手』だと思います」

 翌30日のケース打撃では、左中間への二塁打とセンター右へのヒットで二塁を陥れる好走塁でアピールした。1本目の二塁打は全力疾走をしなかったため意外に思えたが、寺本は練習会後にこんなコメントを残している。

「打ったあと、一塁へ走るのを忘れるくらい集中していました」

 その一方で「自分の力を発揮でき、プロのスカウトの方にいいアピールができたと思います」とも手応えを語っている。存在感を発揮した寺本をスカウトはどのように評価するだろうか。

 同じく外野手としてアピールを見せたのは、おかやま山陽の漁府輝羽(ぎょふ・こうは)である。「ぎょふ」は全国で20人もいない、珍しい姓だという。

 バックネット裏でのティーバッティングからして、打球音が違った。軽く振っているように見えて、打球の弾きがよく、初速スピードが速い。

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