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「こんな選手いたのか!」。
高校生トライアウトで見つけた掘り出しもの (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 フリーバッティングではマシンのカーブにタイミングが合わない様子だったが、徐々に順応。サク越え弾も放った。身長183センチ、体重85キロという立派な体格に、精度に課題はあるものの爆発力のある打撃は魅力十分だ。

 初日を終えた段階で、漁府はこんなコメントを残している。

「緊張しましたが、楽しかったです。甲子園でプレーできたのはうれしかったです。フリーバッティングでホームランを打てて、自信につながりました。反省すべきところがあるので、振り返って明日につなげたいです」

 引率したおかやま山陽の斎藤貴志副部長は、「15年見てきたなかでも、ここまで飛距離のある右バッターは見たことがありません」と太鼓判を押す。

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 高校通算本塁打は24本とドラフト候補としては決して多いとは言えないが、おかやま山陽の場合は練習試合のダブルヘッダーでも多くの部員を起用するため、同じ選手が2試合続けて出場することが少ない。そのため、本数が少なくなっているのだ。すでに10球団近いNPB球団が漁府の視察に訪れているという。

 50メートル走6秒4、遠投95メートルと図抜けた身体能力というわけではないが、ライトからのスローイングの強さは目を引いた。あとはいかに、長打力と将来性を評価してもらえるかにかかっている。

 また、派手さはないものの、実直で努力家な一面もある。斎藤副部長はこんなエピソードを教えてくれた。

「漁府が『打ちたい』と言い出すと思って、近くに硬球を打てるバッティングセンターがあるホテルを探して予約したんです。練習会の前日は夜にバッティングセンターで延々と打ち込みをして、朝も営業時間前に特別に開けていただいて、打ち込んでから甲子園に向かいました」

 30日のシート打撃ではレフトフェンス上部に直撃する二塁打を放ち、さらにアピールした。あと少しで本塁打という惜しい当たりだったが、高い放物線はまさに長距離砲のそれだった。また、四球を選んだ場合にそのまま打席を外す選手が多いなか、漁府は律儀に一塁まで走る生真面目ぶりを見せた。

 本人たちのプロ入りへの強い意志と、支える周囲の祈り。さまざまな思惑が交錯した甲子園球場には、たしかな希望があった。寺本と漁府だけでなく、一人でも多くの選手が目利きに見出され、最高峰の舞台への切符をつかむことを祈りたい。

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