2020.08.26

「トレンディエース」の母校に大器。
快速右腕にスカウトは「見方が変わった」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

契約金1億と評された交流試合出場の好投手は?>>

 瀬田工に最速146キロを計測する右腕がいるらしい──。

 今年2月にその情報を教えてくれたのは、滋賀県の高校野球に精通しているライターの馬場遼さんだった。

 瀬田工は1980年に甲子園春夏連続出場を果たし、夏はベスト4まで躍進。1982年には後年「トレンディエース」として名を馳せる西崎幸広(元・日本ハムほか)らを擁して、選抜高校野球大会に出場。滋賀県の強豪校として知られていた。

 だがそれ以来、瀬田工は甲子園から遠ざかっている。近隣に大手企業の工場が多い土地柄ということもあり、瀬田工の就職率は抜群で、今も学校の人気は高い。しかし、現在の野球部は「古豪」という位置づけにある。

 馬場さんの話を聞いて、私も瀬田工の練習を見に行ってみることにした。

瀬田工から西崎幸広氏以来のプロ入りを目指す小辻鷹仁 好投手の名前は、小辻鷹仁(こつじ・たかと)という。グラウンドで部員たちがキャッチボールをするなか、どの選手と教わらなくても「この選手が小辻だな」とすぐに確信することができた。

 サイドスローに近いスリークォーターの角度で、腕の振りがいかにも柔らかく、美しい。この日は強度の高い投球はしなかったものの、この腕の振りだけでもただ者ではないと思わされた。

 中学時代はプロなど考えもせず、手に職をつけるために瀬田工に入学したという。だが、高校で体重が約15キロ増えて球速も20キロ以上増速。県内でも注目の存在になっていった。

 野球部のグラウンドに面する小屋には、甲子園出場を記念した古びたパネルが置かれていた。同校OBの小椋和也監督は「小辻以外にも130キロを超えるピッチャーが4人います。力のある選手が多いので、今年がチャンスやと思うんです」と古豪復活への熱い思いを語っていた。

 それから半年が過ぎ、小辻の名前は雑誌やウェブを通して「ドラフト候補」として報じられるようになっていた。最高球速も147キロまで伸びた。