好捕手ひしめく高校生ドラフト候補。成田の逸材は抜群に「動ける」
8月7日、成田市営大谷津球場(千葉)のバックネット裏に集まったスカウト陣は、戸惑いを隠せずにいた。
成田高校のシートノックで、お目当ての古谷将也(ふるたに・まさや)が中堅手のポジションに入っている。
「なんでセンターにいるの?」
知り合いのスカウトに聞かれても、首を傾げるしかなかった。古谷は捕手として今秋のドラフト候補に挙がる選手だからだ。
中学時代はU−15日本代表として活躍した成田の古谷将也 足の故障が再発したのだろうか。そんな心配をよそに、中堅の古谷が打球をさばく順番になった。ゴロをつかんだ古谷は、弾むような動作で三塁に思い切り投げた。すると、ボールは三塁手が伸ばしたグラブの上を越えて、そのまま三塁側フェンスに「ドスン!」と鈍い音を響かせた。大暴投とはいえ、うなるようなボールを見る限り故障しているようには見えなかった。
試合が始まると、古谷はさらにエネルギッシュな姿を見せる。1番打者として打席に入り、いきなり中堅右にヒットを運ぶと、猛烈な勢いで一塁を駆け回る。一気に二塁まで狙おうかというオーバーランで相手にプレッシャーをかけ、悠然と一塁に引き上げた。
さらに次打者の右翼前ヒットで一気に三塁へと進んでみせる。そのベースランニング姿にはスピード感と野性味があふれていた。
試合は9対4で成田が成田北を破り、千葉県独自大会第6ブロックの4回戦へと駒を進めた。試合後、古谷を中堅手として先発起用した理由を成田の尾島治信監督はこう語った。
「大会を勝ち抜くために、キャッチャーが古谷ひとりではケガがあったときにどうかな、と思っていたんです。(代わりに先発マスクを被った)坂本(涼)はもともとキャッチャーとして入学して、古谷がいるからサードに回ったんですけど、守備は古谷と遜色ありません。練習試合でも第1試合は古谷、第2試合は坂本で使っていましたから」
この判断の背景には、古谷の故障があった。7月12日の練習試合でファウルチップを左ヒザに受けた古谷は、一時的に捕手として試合に出られなくなってしまった。
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