スカウトがぞっこん!25歳の右腕。平均球速130キロ台だった投手に何が?
灼熱の太陽のもと、独立リーガーたちは例年以上に目の色を変えてプレーしている。
「今年はある意味チャンスなんです」
ルートインBCリーグの福井ワイルドラプターズの指揮を執る元中日の福沢卓宏は、スポーツ界にとって逆風であるはずのコロナ禍を前向きにとらえている。
「高校や大学、社会人野球の大会やリーグ戦が中止、延期になり、彼らのアピールの場が減っている。独立リーグも試合は減っていますが、スカウトが来られる割合は例年よりも高い。それに、独立リーグから指名される選手は即戦力を求められることがありますが、今年はアマチュア選手の動向が不透明な分、こっちの選手を育成枠で補うということもあるでしょうし......」
最速152キロを誇る福井ワイルドラプターズの高橋康二 8月9日、滋賀県甲賀市民スタジアム。この日も某球団のスカウトがネット裏の関係者席に陣取っていた。
あるスカウトは、前日も福井まで出向いたという。そこで福井ワイルドラプターズのクローザーのピッチングを目にし、もう一度見ようと、滋賀までやって来たのだという。
福井ワイルドラプターズのオーナーは、人気YouTubeチャンネルの運営者である。チームはSNSによる情報発信を積極的に行なっており、球団の公式YouTubeチャンネル『ワイラプTV』も開設。そのなかに例のクローザーも紹介されているのだが、「MAX152キロ」の文字が躍る。
「昨日も150キロを超えていましたよ」
そう語るスカウトの声からは、その投手に対する"本気度"が伝わってくる。その剛球をもう一度見たいと願っていたスカウトの思いとは裏腹に、試合はオセアン滋賀ブラックスを相手にワイルドラプターズが大量点を奪い、クローザーの出番は期待薄となった。
それでもスカウトは「こちらからお願いすることはないですが、スカウトが観戦する試合には、監督も"ドラフト候補"の投手をマウンドに送ることが多いんですよ」と、クローザーの登板を待った。
またこの日の試合会場は、彼の出身高校の目と鼻の先にあり、スタンドには凱旋登板を期待した家族や友人が陣取っていた。登板の期待は高まったが、最終回のマウンドに別の投手が上がると、スカウトは試合終了を待つことなく球場をあとにした。
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