スカウトがぞっこん!25歳の右腕。
平均球速130キロ台だった投手に何が? (3ページ目)
じつは高校時代も、それくらいのスピードは出ていたらしい。しかし、どういうフォームで投げれば球速が上がるのかを理解できていなかったと、高橋は振り返る。
高校から大学に進学する際、故障して出遅れた焦りもあったのかもしれない。フォームはバラバラになり、すっかり球速は落ちてしまった。結局、大学での4年間は大きな体を持て余したまま終わってしまった。
プロへの最後のチャンスをBCリーグに求め、福井にやってきた時にはフォームは完全に崩れていた。
「いちばんは踏み出した足がしっかり地面について、そこから腕が出てくる感じを掴むことでした。福井に来た時は、足と腕が一緒に出てきていましたから」(福沢監督)
いわゆる、上体が突っ込むクセを福沢と二人三脚で矯正していった高橋の球速は、急激なスピードで上がっていった。
その感触を体に染み込ませるため、昨年オフ、高橋はニュージーランドに渡った。オークランドにはオーストラリア・ウインターリーグに参加するプロ球団の「トゥアタラ」があり、知人のつてを頼ってこのチームに入団したのだ。
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ラグビー場を改築した球場、慣れない海外生活、給与の遅配など、これまでにない環境に戸惑ったが、日本人選手も多く参加していたこともあって、心地よくプレーできた。しかも、球団創設初のプレーオフ進出という快挙にも立ち会えた。
オーストラリア・ウインターリーグのチャンピオンには伝統ある優勝盾「クラクストン・シールド」が授与されるのだが、ニュージーランドのチームであるトゥアタラがポストシーズンを制するようなことになれば、前代未聞の出来事になる。
地元オークランドにメルボルン・エーシズを迎えたプレーオフは、両国のプライドをかけた大一番となった。1000人も入れば上出来というオーストラリア・ウインターリーグにあって、このプレーオフにはファンが大挙して押しかけ、トゥアタラが初戦を落としたあとの第2戦には4200人のファンで膨れ上がった。
テンションが上がるニュージーランドのファンをよそに、高橋はその雰囲気に飲み込まれてしまった。
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