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弟がドラ6でヤクルト入団。
八戸学院大・武岡大聖が抱えた嫉妬と決意 (3ページ目)

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Nagata Ryotaro

 その言葉を聞いて、自然と涙があふれた。もう一度、全力で野球に向き合うことを決めた大聖は、寮に隣接する室内練習場に向かい、来る日も来る日もバットを振り続けた。

 そんな大聖にとって、大きな転機となったのが大学3年の時だった。春のオープン戦で打席に入ろうとする大聖に八戸学院大の正村公弘監督が突然タイムをかけ、こうアドバイスを送った。

「ノーステップで打ってみい」

 もともと大聖はパワーに定評があり、タイミングさえ取れれば打球は飛んでいくという正村監督なりの計算があった。そのアドバイスが功を奏したのか、アジャストした打球は一塁線を破る二塁打となった。

「あれ、これでいいのか......」

 当初は半信半疑だったが、オープン戦もアドバイスどおりに打つと、7割を超す打率を残し、たちまち自信を取り戻していった。

 迎えた2019年6月の全日本大学野球選手権。初戦の佛教大学戦で、試合には敗れたが大聖は第1打席でセンターバックスクリーン右に本塁打を放つと、第2打席もインコースの球にうまく反応すると、打球はライトスタンド上段に突き刺さった。

「人生を変えてくれた日じゃないですけど、自分の目標を何段も高く設定できるきっかけになりました。本当にここまで頑張ってきてよかったと思えましたし、やっと自分もスタートラインに立てた感じがしました」

 この秋は、リーグ戦が終了すると打撃フォームを見直した。ノーステップはそのままだが、スイング軌道を修正した。大学最後のシーズンを迎える来季に向けて、大きな弾みとなった。さらに、プロ入りを見据え、これまでの捕手兼外野手から、来季は三塁にも挑戦することが決まった。すると、内野守備に定評のある龍世から、技術的なアドバイスを受けた。大聖が言う。

「弟はさすがプロにいく内野手ということもあって、守備を教えるのがうまいですね。日に日に自分でもできるようになったことが増えていきました」

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