明石商・中森俊介も155キロが目標。奥川恭伸の動画鑑賞で気合を注入

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sawai Fumi

 昨年の暮れ、初めて明石商の中森俊介をインタビューした時のことだ。当時1年生だった中森はこんなことを口にしていた。

「将来、プロ野球選手になれたとしても、野球選手としての人生よりその後の人生のほうが長いので、高校で資格を取って、将来のためになるものを身につけたいんです」

明石商のエースとして春夏甲子園に出場し、チームを連続ベスト4へと導いた中森俊介明石商のエースとして春夏甲子園に出場し、チームを連続ベスト4へと導いた中森俊介 明石商は文字どおり商業高校で、週末になると簿記やパソコン、英検など、さまざまな検定試験が行なわれる。とくに春、秋は試験が多く、取材に行った日は数人の2年部員が、翌日にビジネス文書の検定試験を控えており、浦井佑介部長から説明を受けていた。

 そんな中でも、中森は、頭の回転が早く、成績も常にクラス上位。「アイツはホンマに頭がよくて、生活態度も真面目、練習もこちらが言うことをしっかりやり遂げられる」と、狭間善徳監督も認める"優等生"である。

 中森の2019年は、充実という言葉がふさわしい1年だった。2年生エースとして春夏甲子園に出場し、ともにベスト4進出。夏の甲子園では準々決勝の八戸学院光星戦で自己最速の151キロをマークし、スタンドをどよめかせた。

 秋の近畿大会は準々決勝で大阪桐蔭に敗れはしたが、世代ナンバーワン右腕の呼び声は高い。

 だが、この秋の中森の状態は決して万全ではなかった。夏の甲子園では準決勝まで戦い、直後から新チームがスタート。前チームからメンバーは大幅に替わり、県大会序盤こそ複数の投手がマウンドに立ったが、要所の試合を任されるのはもちろん中森だった。

 県大会決勝の報徳学園戦では初回からつかまり、2回までに4失点。3回1/3を投げたところで降板となった。また近畿大会初戦の東山戦でも、なんとか3失点でしのぎ勝利したが、167球を投じるなど苦しいマウンドが続いた。中森は言う。

「この秋はフォームが安定しなくて、状態がよくなかったです。報徳学園戦は対策も立てられていましたし、バッテリー間で呼吸もあっていませんでした。近畿大会中にいい時のフォームの映像を何度も見返して、なんとかいい時に近づけましたが、完全な形に戻らないまま大会が終わってしまった......」

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