意図的ニヤリも究極の投球術。JR東日本・西田光汰は完成度で勝負する (2ページ目)

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ストレートを投げるとき、ボールを浅く握ったり、深く握ったりすることで使い分ける。たとえば、相手が力んでいるなと感じれば、深く握ってフッと抜いたようなボールを投げ、逆に相手を詰まらせたいと思えば、浅く握ってキレあるボールをビュッと投げる。マウンド上で笑顔を見せて、相手打者を洞察するのはそのためだ。

「自分は150キロを超えるようなすごい球を投げられるわけじゃないし、変化球だってそんなに曲がるわけじゃないので......

 誇れるような絶対的なボールがないから、その分、制球力や投球術をとことん磨き、完成度で勝負する。

 今年7月の都市対抗でも2試合(5回2/3イニング)に登板して、許したヒットはわずか1本と完璧なピッチングを披露した。

「わりとピンチで登板することが多いんですけど、たとえば太田がランナーを残していたら、そのランナーは絶対に返したくないんです」

 昨年の都市対抗でも、2回戦の住友金属鹿島戦で7回途中から登板し、そこから5者連続三振で相手打線を圧倒した。回の途中でも、走者がたまった場面でも、安心して任せられるマウンド度胸と安定感は、JR東日本の堀井哲也監督も厚い信頼を寄せている。現在、チームから任せられているポジションはおもにリリーバーだ。

 じつは都市対抗が始まる1週間前、連投の疲れもあって状態は芳しいものではなかった。

「ノースローではなく、ピッチング練習はしていたんですけど、調子が全然上がってこなくて......ずっとしっくりこない状態が続いていましたね」

 それでもやれる準備だけはしっかりやろうと、周囲に相談しながら"心技体"を整え大会に臨んだ。

「(マウンドには)モヤモヤは持ち込まないです」

 それが西田のポリシーだ。自分のなかに言い訳をつくってしまうと、相手に付け込まれてしまう。これまでの経験から学んだことだ。

 チームは3回戦で敗れ、昨年のベスト4超えは果たせなかったが、西田は予選から全試合に登板するなど、リリーバーとしての役割を十分に果たした。

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