今夏を沸かせた2年生エース。帽子は刷新、ガッツポーズも封印した

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

 白い帽子を目深にかぶり、落ち着いた様子で打者と相対する。力みのないフォームから直球を投じ、3つ目のアウトを奪った後は静かにベンチへと駆け出す......。

 この秋、創志学園(岡山)のエース・西純矢(じゅんや)がマウンド上で見せた姿は、夏までとは"別人"だった。

今年夏の甲子園初戦で16奪三振の快投を演じた創志学園の西純矢今年夏の甲子園初戦で16奪三振の快投を演じた創志学園の西純矢 今夏の甲子園で西は大きな話題を"2つ"生み出した。

 ひとつ目は、初戦の創成館(長崎)戦での16奪三振完封に対する賞賛だ。高校野球史上初となる同一校2度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭(北大阪)に、新チーム発足以降唯一の黒星を付けた強豪を圧倒するピッチングには「来年のドラフト1位有力候補」の声が飛び交った。

 その一方で、要所を抑えたときに飛び出すガッツポーズ、渾身のボールを投じた際にズレ落ちる帽子への批判も同時に噴出。これが2つ目の話題だ。

 2回戦の下関国際(山口)戦で、相手ベンチの徹底した待球策でリズムを狂わされたこともあり、「精神面の成熟が課題」という意見も散見された。

 秋の岡山県大会への出場をかけた地区別の予選では、疲労からか打ち込まれる一幕もあったが、県大会初戦は7回無失点。落ち着いたピッチングで相手打線を抑え込み、チームのコールド勝ちに貢献した。

 県大会の初戦後、投球内容に関する質問にひと通り答え終えると、話題はマウンド上での「所作」に移っていった。ある記者が「今日はガッツポーズが出なかったね」と投げかけると、西は神妙な面持ちで語り始めた。

「高校でプレーする間は、『ガッツポーズをしない』と決めました。(夏の甲子園の)2回戦の後半で崩れてしまったのは、自分の精神的な弱さですし、マウンド上での行動で、試合を見てくださっている方々に不快な思いをさせてしまった。これを重く受け止めて、残りの高校野球を戦いたいです」

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