今夏を沸かせた2年生エース。帽子は刷新、ガッツポーズも封印した (3ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

 夏前に発表された侍ジャパンU-18代表の一次候補に選出されていたが、本選考からは漏れた。中学時代は、野茂英雄氏が主宰する「ジュニア・オールジャパン(通称・野茂ジャパン)」への選出経験を持っていることに加え、自身と同じ2年生右腕の奥川恭伸(星稜)が選出されただけに、「悔しさもかなりあったのでは?」と投げかけると、こんな答えが返ってきた。

「あまり期待し過ぎないようにというか、『選ばれたらいいな』と思うようにしていました(苦笑)。たしかに選ばれなかったのは残念でしたが、それはまだ自分に力が足りないということ。最高学年になる来年の日本代表に選ばれるように頑張っていきたいです」

 その奥川や、「世代最速」として注目を集めている佐々木朗希(大船渡)、代表チームでともに戦った黒川史陽(智弁和歌山)、石川昂弥(東邦)らとは「甲子園で対戦したい」と"ライバル意識"も口にする。

 落ち着きを増した投球に加え、チームに必要と感じたことを積極的に言葉にすることも意識している。特に、試合に出場している1年生に対しては、「プレーしやすいように」と適宜声をかけ、気を配る。

「自分が先輩たちに助けてもらっていたので、後輩にも同じ環境をつくってあげたいと思っています。最上級生としてできることをやっていきたい」

 こう語る姿に、感情に任せて戦っていた夏までの"幼さ"はない。「今まで表に出していた気持ちをボールに込めたい」と"新スタイル"への手応えも上々だ。

 2試合連続完封から一転、準決勝、3位決定戦の2試合はともに7失点を喫したように、この秋も新たな自信と悔しさがマスカットスタジアムのマウンドに染み込んだ。その慣れ親しんだ場所に立ち、生まれ変わった姿で聖地行きの切符を掴み取る。

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