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最後まで自分の仕事を。済美の名脇役が
呼び込んだ逆転サヨナラ満塁弾 (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

8回裏に逆転のホームランを打って生還する政吉(左から2番目)8回裏に逆転のホームランを打って生還する政吉(左から2番目)

 伏兵のホームランで9-7と試合をひっくり返した済美の"大逆転劇"が、あと3つアウトで完成する。しかし星稜が簡単に勝利を渡すはずがない。土壇場の9回表に2点を奪い、その裏の攻撃を凌いで延長戦に持ち込んだ。

 10回から12回まで両チームとも無得点。勝負はタイブレークに突入し、13回表に済美は2点を失った。しかし、ノーアウト一、二塁から攻撃が始まるタイブレークなら挽回できる点差だ。13回裏のトップバッターだった政吉は、星稜の攻撃が終わりセンターの守備位置からベンチへ戻る際、"自分の役割"について考えていた。

 政吉はその場面をこう振り返る。

「自分の役割はバントだとわかっていました。自分のあとには一番の矢野が控えているので、確実に決めようと。監督からは『セーフティバントをしてこい』と言われたので、自分も生きるためのバントをしました」

 監督の指示どおりにセーフティバントを試みた政吉の打球が、サードの前にコロコロと転がっていく。政吉は頭からファーストベースに滑り込んだ。

「セーフかアウトか全然わからんかったんですが、ベースコーチから『セーフ』と言われて『よし!』と思いました」

 ノーアウト満塁の大チャンスを生み出した政吉は、一塁ベースに立って「頼むぞ、矢野」と声をかけた。その矢野は2ストライクと追い込まれながらファウルで粘り、6球目をすくいあげる。高々と舞い上がった打球は右翼ポールに当たって落ちた。

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