松坂大輔使用で話題のグラブ。「龍」がもたらすフィット感のこだわり (3ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

 この"質"については、河合自身も「グラブの機能を向上させるために、素材と手間を惜しまないこと。これを常に忘れることなく徹底しています」と胸を張る。また、その製造工程にも、高い質を生む秘訣が隠されている。

 通常、大手メーカーなどでは、各工程を複数名で分担し、グラブを完成させる。ひとりの担当箇所が細分化されることで、作業スピードは格段に向上するが、個人の微妙なクセや意思疎通の不足などで仕上がりにばらつきが生じる可能性もある。

 それに対してRYUのグラブは、製造の全工程を河合がひとりで担当している。そうすることで、各段階での微調整が一貫したものとなり、バラつきのない、高品質なグラブを作り上げることが可能になる。時間は要するものの、ブランドとして譲れないこだわりのひとつだ。河合は言う。

「グラブ作りへの思いは、譲れない確固たるものがあります。生意気に聞こえるかもしれませんが、自分と同じくらいの思いの強さ、"熱さ"を持っている人でなければ、作業工程を任せたくありません。一切妥協することなく作り、自分が心の底から納得したものを届けたい。僕自身、初めてオーダーグラブを手にしたときの胸の高鳴りは、今でも鮮明に覚えています。そういった思いを味わっていただけるようなものを作り続けていきたいです」

 そして、先述の髙橋純平をはじめとする東海圏のアマチュア選手たちのグラブ使用過程を見て、「学生野球のハードな使用でも問題が生じない耐久性」を最重要項目とした改良を加え、2017年に独立後、本格的にブランドを立ち上げる。RYUの完成度の高さに惚れ込んでいた五十住が「独立するときに、力になれることがあったら言ってくれ」と伝えていたことがきっかけとなり、ますかスポーツで販売することとなった。

(後編につづく)

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