2018.07.25

「限りある野球人生に後押しを」
松坂愛用のグラブに込められる思い

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

【連載】道具作りで球児を支える男たち RYU・後編

(前編はこちら>>)

 中日・松坂大輔が使用していることで話題となっている、河合龍一(かわい・りゅういち)が立ち上げたブランド「GLOVE STUDIO RYU」のグラブ。唯一RYUを取り扱っている、岐阜県羽島市のスポーツ店「ますかスポーツ」には、松坂の登板翌日を中心に問い合わせの電話が数多くあるが、「現物を見てみたい」と店舗に足を運ぶ顧客も少なくない。

オールスターでは特別仕様のRYUのグラブを使用した松坂 少年野球の選手から、週末の草野球を楽しむ年配のプレーヤーまで。幅広い年齢の顧客が訪れ、店内にあるRYUのサンプルに手を通す。ますかスポーツの代表取締役・五十住友昭(いそずみ・ともあき)は言う。

「高校野球の選手だけでなく、小学生から草野球プレーヤーまで、多くのお客さんが『RYUの実物を見たい』と店舗に来てくれています。来店した多くの方が、『これはすごい!』、『実際触れてもいいなあ』と年齢関係なく”野球少年”の顔で喜んでくれる。『この仕事をやっていてよかった』と、スタッフ一同で感じる瞬間です」
 
 そのなかに、五十住の印象に強く残っている顧客がいる。宮城から車で来店した元高校球児の青年だ。時間にして約14時間。長い道のりを経て来店したことに驚き、五十住は尋ねた。

「時間はもちろん、高速代とガソリン代もばかにならない。今の時代、グラブに関する情報は、ある程度ならネットでも手に入るし、オーダーもFAXを1枚送れば完結する。それにもかかわらず来てくれたことにビックリして、『なぜ宮城から来てくれたの?』と聞いたら、『どうしても実物を見てみたくて』と言ってくれたんです」

「実物に触れて、納得した上でオーダーしたい」という真っ直ぐな気持ちに、胸が熱くなった。そして、かねてから抱いていた思いをこう吐露する。

「RYUを販売していくなかで、職人と僕の共通意識のひとつが『学生プレーヤーの限りある野球人生を後押ししたい』という思い。特に高校野球は2年半しかないわけで、そこで『グラブは半年待ちです』となってしまうと、時間的に間に合わない場合も出てくる。それぞれのカテゴリーに優劣はもちろんありませんが、可能ならば、学生選手たちにスポットを当ててあげたい。そこで、軟式野球プレーヤーの青年に、『自分のグラブより学生の納期を優先させるとしたら、やっぱり快く思わない?』と尋ねてみたんです」