球児を支える秘密兵器。中村奨成の「カチカチバット」誕生秘話
【連載】道具作りで球児を支える男たち カウンタースイング・前編
今年で100回を迎える夏の甲子園大会。各地で大舞台を目指す高校球児を、道具作りで支える男たちにクローズアップし、紹介していく連載がスタート。その第1弾は、昨夏に甲子園の最多ホームラン記録を塗り替えた中村奨成(広陵→広島カープ)も使用した「カウンタースイング」の誕生秘話に迫る。
昨夏の甲子園で6本のホームランを放った、現広島の中村奨成「カチッ! カチッ!」
熱心に素振りを繰り返す選手から、聞き慣れない音がグラウンド上に鳴り響く。その姿を見つめていると、すかさず指導者から説明が入る。
「ああ、"あれ"ね。去年めちゃくちゃ話題になったでしょ? 気になって、ウチでも振らせているんです」
昨夏から全国各地のグラウンドで見られるようになった光景だ。ここでの"あれ"とは、「カウンタースイング」という可動式のコマがふたつ搭載されている素振り専用のバットを指す。スイングと同時にふたつのコマがバットの根本からヘッドに移動して音が鳴る仕組みで、その"音の回数"でスイングの良し悪しが判断できるようになっている。
トップからタイミングよく切り返せると、ふたつのコマは密着した状態でバットの根本に残る。そしてスイングと共に移動してヘッドでコマを叩くことになり、後頭部で「カチッ!」と1回音が鳴る(これを「タマった状態」と呼ぶ)。反対に、「タマっていない」スイングだと、ヘッドにふたつのコマが分離しながら飛んでいき、「カチッ、カチッ!」と2回音が鳴る。
昨夏の甲子園で大会記録となる6本塁打を放った中村奨成が、練習で使用していた"カチカチバット"と紹介されたことで人気に火がつき、現在は納品されるのに約4カ月待ち。押しも押されもせぬ人気商品となった。
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