名門進学校・彦根東はなぜ野球で
甲子園を沸かせるチームになったのか (4ページ目)
もちろん、競争心を刺激するためにあえて「何してんねん!」と身内を叱咤する強豪校もあるだろう。だが、そんなバリバリの強豪を向こうに回して彦根東が勝つには、ベンチがグラウンドで戦っている選手の不安を取り除いてあげるほうが近道だ。そう考えた北村は、常にポジティブな言葉を選手に投げ掛けている。
そして、ベンチにも「集中力」はある。試合終盤、「ここが勝負どころだ」と判断すれば、北村を中心としたベンチにも「スイッチ」が入る。
「声を途切れないようにします。集中打のときはベンチが大盛り上がりで、全員が笑顔で声を出している。そういうときに集中打が出やすいということを、僕たちは練習試合を通してわかってきたので」
彦根城の敷地内に学校があり、打撃練習が満足にできない環境。進学校であり、強豪校と比べれば時間が限られる練習量。言い訳をしようと思えばいくらでもできるはずだ。しかし、彦根東は本来マイナスに働きそうな要因をことごとくプラスに換え、甲子園球場を沸かせるほどのチームに成長した。
3回戦の花巻東(岩手)戦では増居が9イニングをノーヒットに抑えたものの、得点を奪うことができず延長戦の末に敗れた。だが、その戦いぶりは大いに「強さ」を感じさせるものだった。
今春の彦根東の戦いぶりにヒントを得たチームも多いに違いない。100回大会を迎える夏の甲子園でも、そんなチームが甲子園の常連校・名門校を苦しめるシーンが再び場内の喝采をさらうのだろう。
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