名門進学校・彦根東はなぜ野球で
甲子園を沸かせるチームになったのか (2ページ目)
8回の逆転弾は狙い通り、インコースのストレートを捉えたもの。高内はただ気分でバットを替えたのではなく、相手バッテリーの配球を読み、根拠を持って替えたのだ。
この日のように、彦根東というチームは試合後半に得点を挙げることが多い。3番を打つ朝日は「後半勝負の練習をしてきました」と証言する。
「普段から8回、9回に確実に1点を取る練習をしています。たとえば、ランナー一、三塁の場面でしっかりと転がすとか。いろんなバリエーションの攻撃練習をしてきました。練習試合でも、前半に負けていても後半に勝ち越すケースが多かったので、公式戦で焦らなくなりました」
試合を作ってくれる増居という軸の存在、そして「後半勝負」という戦術。それらのよりどころがあるからこそ、彦根東は自信を持って戦えるのだろう。
そしてもうひとつ、選手たちの口からキーワードとして挙がったのが「集中力」だ。4番に座る野嵜重太(のざき・しげた)はこう語る。
「僕たちは体の大きな選手もいないし、ホームランバッターもいません。でも、たとえ打てなくても、チャンスを作って集中打で1イニングに得点を多く取って勝ってきています。チャンスでの勝負強さ、集中力は武器だと思います」
集中力──。
目で見えるものではないだけに、観念的に捉えられがちだが、彦根東の多くの選手から「集中力」という言葉が出てきた。それでは、彦根東の選手にとっての「集中力」とは何か。朝日に聞いてみた。
「『流さない』ということです。練習をこなさない。このメニューにどんな意味があるのか? と自分で考えて、自分で動く。それが集中力につながっていくと考えています」
常にアンテナを張り巡らし、小さなことにも疑問を抱いて日々を過ごす。そんな積み重ねが試合での「集中力」につながっているという。そして、それは彦根東が県内でも有数の進学校であることと無縁ではない。野嵜は「勉強によって集中力が養われている」と言い、朝日も「勉強することによって野球につながってくると思います」と語る。
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