メチャクチャ打つけど投げられない。西川愛也にドラフト指名はあるか (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ケガに見舞われ、実質、打撃でアピールするしかなくなったことで、探究心はさらに強くなった。今年の春からはバッティングフォームを大胆にチェンジ。岩井監督の助言もあり、構えたときのグリップの位置をベルト前付近まで大きく下げた。その理由をこう説明する。

「昨年までは力んでしまって、詰まることが結構あったんです。もっと力を抜いて、バットをムチのように柔らかく使って、インパクトだけに力を伝えたいと思って。そう考えたら、この位置にバットを置いて振り出すのが一番しっくりきて、そこから打球の質が変わり、強く、飛距離も出るようになりました」

 フリーバッティングを見ていると、いかに打ちやすいボールとはいえ、見事にヒット性の当たりを続ける。どのコースに対しても、実にスムーズにスイングし、芯でとらえる。高校生ではめったに見られない風景だった。

「打ち分けるのは得意です」

 試合でも、体勢を崩されるなどの変な凡打がない。そのことについて聞くと、「普段から凡打の質を上げることにこだわっています」と、まさに打撃職人さながらの答えが返ってきた。

 スカウトたちに、西川のことについて聞くと「投げられるようになるのか、そこだけ」と口を揃える。育成で指名し、コンディションが戻れば即支配下登録に......と検討している球団もあると聞く。ドラフト当日、西川愛也の名はどのタイミングでアナウンスされるのか。

「キャッチボールをしていても、少しずつよくなっている感覚はあるんです。でも、まだ力を入れて投げられない。夏が終わってから、左投げの練習も一応しているんです。体全体のバランスも良くなるっていうし、やれることはやろうと思って。とにかく早く治したい。それだけです」

 稀有(けう)なヒットメーカーにとって、最良の日となることを願うばかりだ。

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