身長167cm、公立高校の「小さなドラフト候補」が投げるスゴい球 (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

 その山本の進路だが、夏の大会期間中は大学進学と伝わっていた。事実、関西にある3つの大学の関係者がスカウト活動に躍起になっていた。しかし大会が終わり、山本の気持ちはプロへと傾いていった。

「夏休みの終わりに吉田先生と面談して、気持ちが固まりました。当初は『大学でアピールして、プロにいきたい』と思っていたんですけど、いける可能性があるなら早い方がいい。プロは野球に打ち込める環境が揃っていますし。それに今は、筋力もついて、ピッチングがすごく伸びていると感じている時期。ならば、その時期をプロで過ごした方がいいんじゃないかと考え、決めました」

 この先に待っているのは、身長も公立高校出身のプロフィールも関係ない競争の世界だ。普通の野球少年だった山本は、自身を"ドラフト候補"にまで導いたストレートを信じ、猛者たちが揃う世界でいかにして戦っていくのだろうか。

「いいバッターとどんどん対戦したい。いくらいいバッターでも人間なので......。『打てるものなら打ってみろ』という気持ちで投げていきます。これまでも僕と対戦するバッターは、最初はなめた感じでくるんですけど、それを抑えるのが楽しみでもありました。先々はプロの世界で活躍して、見ている人が167センチという身長を忘れるようなピッチャーになりたいです」

 球界最小投手・山本拓実のプロ野球人生が、ここから始まる。

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