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「ありんこ軍団」八王子はどうやって
甲子園にたどり着いたのか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 八王子高校はこれまで西東京大会で2度準優勝になるなど、「あと一歩」で甲子園を逃してきた。そして60万人近い人々が暮らし、広大な面積を誇る八王子市から、今まで甲子園に出場した学校はなかった。これほど重い扉を、「甲子園に行けなかった先輩たちより弱い」というチームがこじ開けてしまった。

 なぜ、八王子は西東京で優勝できたのだろうか。その理由を彼らの「1年間」を通して紐解いてみたい。

 昨夏の八王子を見て、「甲子園を狙える」と思った理由はいくつかある。まず、横森拓也(現・拓殖大)という西東京トップクラスの左腕エースがいたこと。さらに、守備力が堅かったこと。そして何より衝撃的だったのは、「攻撃のバリエーションの豊富さ」だった。

 ひとたび走者を出せば、盗塁、バント、バスター、ヒットエンドラン......とあの手この手で走者を三塁まで進め、それからはスクイズ、叩きつけるゴロ、強攻策、時には三塁走者がスタートして打者がヒッティングする「三塁エンドラン」まで駆使した。心憎いまでに「打球判断」が見事で、ゴロが転がって内野手が捕球した時点ですでにランナーがホームへ滑り込む寸前......というシーンを何度も見た。

 決して目を見張るような強打者がいるわけではない。それでも、1番から9番までどの打順で始まっても得点を奪えるような、そんな鮮やかで機能的な打線だった。ふと八王子側の応援スタンドを見ると、「ありんこ軍団」と染め抜かれた横断幕が見えた。まさに巨象に無数のアリが群がって倒す、ジャイアントキリングの野球。だが、昨夏の早実戦では序盤からエースの横森がつかまり、守備の乱れもあって八王子のよさは出せないまま終わった。

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