大阪桐蔭、浦和学院......なぜ「番狂わせ敗退」は起きたのか?

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 もう10年以上も前のことになるが、都内のある強豪校が、夏の甲子園予選の、たしか1回戦だったと思うが、名前だけで考えたらどう転んでも負けるはずのない相手に、初回から大量点を奪われて、ありえない展開とありえない点差で、5回コールドで敗れた試合の現場に立ち会ったことがある。

 もちろん、その年も優勝候補のひとつに挙げられていて、それに見合う実績も選手の素質も持ち合わせていたのに、まさに"悪夢"を見るような思いで、その1時間半ほどの5イニングを茫然と眺めていたのを覚えている。

大阪大会3回戦で関大北陽に敗れた大阪桐蔭の高山優輝大阪大会3回戦で関大北陽に敗れた大阪桐蔭の高山優輝 その試合、強豪校は初回から積極的な攻めに徹していた。走者が出れば、送らずに盗塁、エンドランでチャンスをふくらまそうとする。走者が2人溜まると、ダブルスチールを敢行。相手校を一気に圧倒し、早いイニングで一方的な試合展開に持ち込もうとする意図がありありと見えていた。

 ところが、その積極策がことごとく裏目に出て、次々とチャンスをつぶすと、逆に、相手校の地道な作戦に対して、強豪校にミスが続いた。ミスをカバーしようとしたバックアップの野手からの返球が大きく逸れて、ミスがミスを生み、傷口を広げてしまう。

 気がついてみたら、3回で10点以上のリードを許して、強豪校のほうが必死に点差を追う展開になってしまった。結局、5回コールドで"サプライズ"な敗戦となったように記憶している。

 ご存知のように、野球には「流れ」というものがある。この時の話を、野球の「流れ」に詳しい方に訊いてみて驚いた。この時の強豪校の試合の進め方は、ほぼすべて、野球の「流れ」を無視したものだと聞かされたからだ。

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