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「ありんこ軍団」八王子はどうやって
甲子園にたどり着いたのか (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 安藤監督は野村克也氏(元・楽天監督)が監督時代に選手に配布した『ノムラの教え』のように、チームとして戦い方、考え方を共有するものがほしいと考え、この『野球マニュアル』を作成したという。

 主将の川越は言う。

「入部して初めて『野球マニュアル』を読んだ時は、『ずいぶん難しい野球をやるんだな......』と思いました。中学までは細かな野球をやってこなかったので。でも3年間かけて勉強して、安藤先生の野球が理解できるようになったと思います」

 八王子は学校から野球部のグラウンドまで距離があり、平日は練習開始が17時近い時間になる。授業終了後、学校からグラウンドまでマイクロバスで移動する時間を利用して、1年生はこの『野球マニュアル』を徹底的に叩き込まれるのだ。

 今夏6試合で7盗塁を決めた2番打者の竹中は、意外なことを打ち明けた。

「50メートル走のタイムは6秒3で、僕より速い選手はいくらでもいると思います。それでも、スタートの練習をしてきたので、盗塁ができるのだと思います」

 足が速くなくても訓練次第で盗塁はできるようになる。それが八王子の野球なのだ。竹中によると、盗塁のスタートにはコツがあるという。

「両手を進みたい方向とは逆に切る、『ツイスト』のような動きをすることで、スムーズにスタートを切ることができます」

 こうして秋から春にかけて走塁練習を積んでいくと、ある副産物があった。もともと高かった守備力が、さらに向上したのだ。川越が証言する。

「コンマ何秒にこだわって走塁練習をしてきたので、その走塁に対処するために守備がうまくなりました。安藤先生からは『日本一の走塁ができれば日本一の守備ができる』と言われてきました」

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