「ありんこ軍団」八王子はどうやって
甲子園にたどり着いたのか (3ページ目)
昨秋のシーズンが終わった後、八王子の野球部グラウンドで練習を取材する機会があった。安藤徳明監督は「特別なことはしていません」と言っていたのだが、そんなことはなかった。
練習開始直後のランニングを終えると、選手はすぐさまダイヤモンドの各塁に散った。すると、マウンドに投手役の部員がつき、一塁ランナーは二盗のスタート練習。二塁ランナーは三盗、もしくは打者役の山本学コーチが打つ打球(危険がないようにテニスボールを使用)に応じてスタートするか否か判断する練習。三塁ランナーはスクイズのスタート練習......と、いきなり走塁練習が始まったのだ。これはウォーミングアップも兼ねているという。安藤監督に意図を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「野球というスポーツは、一塁から1つ進むごとにアウトを1つずつ取られると、1点も入らないようにできています。つまり、どこかで1つでも多く先の塁に進まないといけません。二死二塁でヒットが出たのにホームに還れず、二死一、三塁になって点が入らない......というケースはよくあります。ウチは二塁からワンヒットでホームに還れる野球をしないと勝てません」
フリーバッティング中もランナーをつけ、走路の手前にネットを立てて安全を確保した上で打球判断の練習を繰り返していた。いかにこのチームが走塁に力を入れているかがうかがえた。
そして、もうひとつ。安藤監督は『野球マニュアル 野球における考え方』と題された手製の小冊子を見せてくれた。その冊子には、試合の具体的な状況ごとに攻撃側・守備側の立場から「こう考えるべき」という内容が48ページにわたって綴られていた。
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