駒苫vs早実、伝説の決勝から10年。野球を諦めた男たちの「88会」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●取材・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro
  • 片平裕志●取材協力 cooperation by Katahira Yuji

 1988年生まれは今年で28歳になる。この世代は田中、斎藤に限らず、前田健太(ドジャース)、坂本勇人(巨人)、柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)、大野雄大(中日)、澤村拓一(巨人)、石川歩(ロッテ)ら、プロで華々しく活躍する選手が多い。

 一方、ノンプロ88会に集まってくる人間は全員、本格的な野球からはすでに卒業している。

 早実出身の小柳竜巳は9年前、早稲田大学の入学式の日に野球部を退部した。

「高校3年の冬から大学の練習に参加していて、ずっと『このまま続けるか、やめるか』で悶々としていたんです。大学の野球部に入って印象的だったのは、上本さん(博紀/現・阪神)のプレー。小柄なのに自分なんかより飛ばすし、『こんな人がプロになるんだろうな』と思いました。甲子園に行くという目標を達成して、プロを目指す気持ちが切れて、このままなんとなく大学で続けるなら……と思って退部することにしました」

 退部後はしばらく、「何をしていいかわからなかった」という。アルバイトや海外旅行をしてみても、刺激が足りない。大学2年生までは、早慶戦を見ると複雑な思いがこみ上げてきた。

 しかし、「別のフィールドで負けないように頑張ろう」と野球に踏ん切りをつけ、就職活動を経てエイベックスに入社。現在は映像コンテンツを扱う関連会社に勤務している。仕事に対して自信と誇りが持てるようになったからだろう。年々、プロに行った斎藤との関係に変化を感じるという。

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