やんちゃ軍団をやる気にさせた高松商・長尾監督の対話術

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 伝統校らしい、とはいえない。ダラダラとはしていないが、キビキビしているとはいえない。"四国四商"(高松商、高知商、松山商、徳島商)の持ち味であるはずの守備力も随所で凡ミスが見られ、決して秀でているとはいえない。

 だが、その分、小さくまとまった感じもない。というよりも、むしろ爆発力がある。従来の伝統校のイメージとは真逆。それが、今年の高松商のチームカラーだ。

就任わずか2年で甲子園準優勝を果たした高松商・長尾監督就任わずか2年で甲子園準優勝を果たした高松商・長尾監督

 その"新高松商"を率いるのが就任2年目の長尾健司監督だ。中学校に21年間勤務し、飯山中と香川大附属坂出中を全国大会に2度導いている四国中学球界の名将だ。1996年以降、甲子園出場のない名門再建を託され、中学と高校の人事交流で2014年4月に高校野球の世界にやってきた。

 長尾監督が指導者としての株を上げたのは、附属中を全国大会に出場させたこと。練習時間は平日45分間のみ。相手が控え選手を出しても3回コールド負けが珍しくなかった弱小校を強豪に変貌させたからだ。

「附属の子たちは、『本当は、オレたちは強いけど、練習時間が短いから負けてるんだ』という井の中の蛙みたいな感じだった。そこで、『お前たちはそう思ってるけど、先生は違うよ』と。附属の子たちは考える力もあったので、ガミガミ言ってやるよりも、いかにして短い練習でも戦えるかを考えようと」

 この経験から、高松商でも同様の指導をしようと考えた。ところが、実際に現場に来てみると思い通りにはいかなかった。

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